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  • 執筆者の写真井本整体フランス支部

パン作りに学ぶ生き物としての人間

3月17日、フランスの新聞やテレビでは、「あの日から1年」という

テーマの記事やニュースが多くなりました。

ちょうど1年前の3月17日から、最初のロックダウンが始まったのです。

そうか、もう1年か・・・と思いながら、当時の様子を写した新聞の写真などを

眺めていました。


そういえば、ロックダウンが始まってすぐ、スーパーから小麦粉が消えました。

汎用性が高く、フランスの食卓を支えるベースとなる食材なのかもしれません。

そして学校が閉鎖になったため、子供たちとパンやお菓子作りに時間を費やす家庭が

増えたことも、小麦粉の消費を加速させた理由の一つ。


私もこの時期初めてパン作りに手を出した一人です。

最初の数回は、「なんとか食べられる」というレベルで、

パン作りの奥深さを痛感した時期でもありました。


フランスのパン用強力粉の裏にレシピが載っていますが、

思っていたよりシンプルで、ちょっとハードルが下がりました。

そうすると欲が出て、「日本で食べるようなふわふわパンが作りたい」と思います。

そしてレシピを探してみると、まあ、その工程の細かさと丁寧さ。

そして必ず目にする見慣れない言葉、「ベンチタイム」。


作戦会議、もしくは1回退場するのかと思いましたがそうではなく、

1次発酵を終えた生地のガス抜きをして分割した後、

成型前に10分から20分ほど生地を休ませることだそうです。


1次発酵した生地はふわっと緩やかに膨らんでいますが、

麺棒などで生地を伸ばしてガス抜きをして、さらに必要な重さに分割して生地を丸めるので、

せっかく膨らんでいた生地にかなりの刺激が加わります。

この刺激が落ち着いて、少し発酵が進んで生地がゆったりするのを待つための時間だったのです。


発酵に比べるとかなり時間が短いこの工程、飛ばしたことがありました。

ところが、分割した生地をいざ成型のために伸ばそうとしても、

まるで私の作業に反抗するかのように、伸びることに全く協力しないどころか、

伸びたと思わせておいて、手を離すと元のところに縮もうとしています。

こちらも負けずとまた伸ばしますが、どうしても抵抗される。

こちらの思い通りにはさせてくれません。


また別の日に、今度はきちんとベンチタイムをとってみました。

すると、パンは素直に私の作業通りに形を変え、あっという間に成型が出来上がりました。


2年ほど前の機関紙『原点』の井本先生のお話を思い出しました。

姿勢の悪い子供をくくりつけて無理やり背筋を伸ばしても、外せば反動で以前にも増して姿勢が悪くなってしまうのと同じように、

曲がっているものを力づくで真っ直ぐにしたり、伸ばしたりしようとしても、

逆に真っ直ぐなものを無理やり曲げようとしても、

元に戻ろうとする抵抗力が働いて、ますます悪い結果となってしまうものなのかもしれません。


井本先生がおっしゃるように、人間も生き物、知識や作意にとらわれず、

自然の計らいに逆らわず生きていくことが、日々を軽やかに過ごす秘訣なのかもしれません。


パン作りを初めた時から1年。

次回パンを作るときは、パン生地にリズムに合わせ、

ここぞというタイミングに逆らうことなく、美味しいパンになるように頑張ろうと思います!










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